経営組織論の基礎 / 高橋正泰

1.事業部制組織

①歴史的背景

DU PONT社は第一次世界大戦の終結により、それまでの火薬・爆薬の生産を大幅に縮小せざるを得なくなった。
そのため、人工皮革、染料、ペイントなどさまざまな分野に進出した。
ところがそれにもかかわらずDU PONT社は不振が続いたため、問題を分析した結果、
このような製品系列の多角化に対して組織構造が適切ではないという結論に達した。
そしてさまざまな経緯を経て、1921年の大幅な赤字を契機にそれまでの職部制組織から、
爆薬や染料をはじめとする5つの事業部制組織へと組織改編が行われた。
日本における事業部制導入は松下電器が最初である。
1918年に創立された同社は、1993年に17個所の工場を第1から第3までの事業部に整理し、
さらに第4事業部を本社部門というべき本店事業部を設置している。

②事業部制組織の特徴

事業部制組織では、各部門は事業別に編成されている。
部門ごとの事業内容は、製品が基準となっている場合が多いものの、地域が基準となっている場合もある。
特に、国際化が著しい現在では地域を基準とする企業も増えている。
また、各事業部には有機的職能が揃っていることから、各部門は利益計算について自己充足しており、
利益計算単位として機能するようになる。
このことから、事業部制を「企業内企業」と称することもある。

③事業部制組織の長所

1.事業部制組織の場合部門ごとの利益計算が容易であると同時に、部門ごとの業績比較が容易である。
事業部制の場合、各部門ごとに一連の事業活動が完結するように部門が編成され、利益計算単位として機能するからである。
このことにより、各部門ごとの利益計算が可能になり、利益という単一の基準によって部門ごとの業績評価が可能となる。

2.責任の所在が明確である。
これは、職能部制組織とは異なり事業部制組織の各部門には調達・生産・販売といった各機能が揃っているため、
事業を遂行する祭に他の事業部とは関係なしに自律して遂行することが可能なうえ、事業部長には業務的意思決定と
管理的意思決定についての権限が委譲されているからである。

3.多角化戦略の実行が容易である。
事業部制組織においては、新しい製品系列を付け加える場合、企業全体の組織構造を変更することなしに、
その製品系列のための事業部を加えるだけですむからであり、職能部別組織と比較すると大幅に安いコストで多角化できる。

4.本社部門は特有の活動に専念できる。本社部門の特有な活動としては、経営戦略の策定、各事業部の調整と統制、
各事業部の業績評価などが考えられる。職能部制組織における本社部門においてもこのような活動が同様に行われるものの、
事業部制組織における本社部門は分権化しているためにこれらの活動に特化しており、日常業務の管理などにわずらわされることがない。

5.トップマネジメントの後継者の育成が容易である。各事業部の責任者は事業部での管理の経験を積むことで、企業全体の利益管理など
について擬似的に体験することが可能である。また、各事業部ごとの責任が明確であることから、優れた業績を残した事業部の責任者を
トップマネジメントとして選抜することが明確である。

④事業部制組織短所

1.重複投資がおきやすい。理由、各事業部ごとに購買・生産・販売といった職能を内包し、設備や人員を共通化して利用できないから。
事業部ごとの利益計算が容易で、かつ責任の所在が明確になると、それだけ利益の出しやすいところに投資が集中しがちになるから。
各事業部の責任者は、トップマネジメントへの昇進が部門の業績評価と強く関係しているからである。

2.本社部門の統制が弱まると各事業部が独走して、短期的な利益の追求に走ったり、事業部間の資源分配が滞る。

3.事業部間の交流が行いにくいため、複数の事業部間にまたがるようなプロジェクトは実行しにくい。
(2.3は事業部ごとに業績や責任が明確にされる事による一種のセクショナリズムと、事業部間の競争により生まれてくる
各事業部ごとの独自の手法や考え方の違いなどに起因する。)

事業部制組織は優れた組織形態であるが、事業部が事業や製品ごとに編成されるため、技術革新や市場など環境の変化が激しくなると
追随するのが困難になってくる。そこで、より柔軟に環境の変化に対応するように考案されたのがマトリックス組織(SBU、チーム組織)である。
これらの組織形態に共通しているのは、横断的に部門編成を行う事で環境変化に対応している点や、組織構造もさることながら、組織過程の変化も
重視している点である。

2.マトリックス組織

①歴史的背景

プロジェクトを単位として政府関係者と企業側の関係者、特に各職能の担当者との間での窓口の一本化をはかり、
効率的に事業が行われる事を目指したのであった。そこで、企業全体をプロジェクト別に編成することなしに、
プロジェクトの遂行に適合する形で考案された組織構造がマトリックス組織である。

②特徴

マトリックス組織においては命令の一元性が放棄されて、命令の多元化が認められている。
即ち、垂直的なコミニケーション・チャンネルをともなう階層構造をもつ各部門に、水平的なコミニケーション・チャンネルが公式に認められ、
作業に対する権限が二重化される。そのため、各部門は複数の命令体形をもつことになる。
部門間の調整は水平的なチャンネルを通じて行われるようになる。
マトリックス組織は複雑な組織構造になるため、つぎの3種類の管理者が必要となる。

第一は、通常トップマネジメントから構成されるゼネラル・マネージャーである。
マトリックス・マネージャー間のコンフリクトを調整し、マトリックスの維持に努める。

第二はマトリックス・マネージャーである。
事業遂行上必要な経営資源を管理する経営資源管理者と、プリジェクトや事業の進行状況などを管理する業績管理者の2種類に分けられる。

第三はツーボス・マネージャーである。これは、部門間での経営資源の運用については経営資源管理者から、事業の進行については業績管理者
からというように、2人のマトリックス・マネージャーからそれぞれ指示を受けて部門間の管理を行う。
あえて、命令の一元化を放棄して二元的な命令体系を導入している。

③長所

1.変動の激しい環境の問題と複雑な技術の問題に対して同時に対応可能である。
これは、一方で業績管理者が市場をはじめとする環境の問題に対処し、他方資源管理者が企業内の資源の効率的運用の問題に対処するからである。
2.資源の共有化がはかられる。これは、異なる部門であっても資源管理者での調整が可能であるからである。

④短所

1.構造が複雑であり、命令体系に混乱が生じ易いということである。
すなわち、もともと命令体系が二重化されていることが混乱の原因を内包しているうえ、資源管理者と業績管理者との間に対立が生じると、
両者の間で主導権争いが始まり、責任の所在が曖昧となって混乱を助長する。

2.ゼネラル・マネージャーへの負担が過大となる。この理由は、組織内での混乱が生じないようにするためには、
ゼネラル・マネージャーによるマトリリックス・マネージャーのバランスを調整することが不可欠で、
戦略的意思決定などの業務に付加されることになるからである。

3.組織の基本体系

①ライン組織

直線組織、もしくは直系組織とも呼ばれ、もっとも基本的な組織形態であると考えられている。
また、企業だけでなく軍隊や教会等においても用いられている組織形態であることから、軍隊組織や教会組織と呼ばれることもある。
ライン組織の特徴は最上位に位置するトップから末端の各作業者にいたるまで、一直線の指揮命令系統が形成されていることにある。
すなわち、各作業者はただ1人の管理者からのみ指示・命令を受けることになり、指揮・監督に関する責任と権限が明確に示され、
混乱が発生しにくくなっている。

ライン組織は単純であるものの、管理者の負担が大きくなりがちであるという大きな問題がある。
特に、部下の数が増加したり、部下の受け持つ技術や作業内容が複雑になってくると、管理者の負担が急激に増大する。

また、ライン組織を情報伝達という点からみると、上から下への情報伝達においては比較的容易であるが、下から上への情報伝達に時間がかかることと、
さらに、横の連絡を行うにはいったん上位者へ情報伝達してから、あらためて下位に情報伝達されるため時間がかかる、という問題点がある。

②ファンクショナル組織

各機能ごとに専門の担当の職長を置くという職能別職長制である。ファンクショナル組織において各作業者は、おのおのの職能の関する事項について、
その担当の管理者から指示・命令を受けるので、全ての管理者から指示。命令を受けることになる。

1.利点
Ⅰ、各管理者が担当する職能が専門化されるため、作業についての命令・指示が能率的に行なわれるようになり、作業内容の標準化が進められるようになる。

Ⅱ.各職能の指示・命令が専門的な管理者に担当されているため、いずれの専門的職能に属さないような例外的事項の発生の識別が容易であり、
早急に対応することが可能である。

Ⅲ.各職能を専門に応じて配分することになるので、専門的能力をもった管理者の育成が容易となる。

2.問題点
Ⅰ.現実にはおのおのの専門的な職能を明確に配分することは極めて困難である。そのため、担当する職能に重複などが発生すると、
管理者同士での責任転嫁や権限争いなどが発生しやすくなり、組織全体が混乱するおそれがある。

Ⅱ.命令体系が複雑であり、しかも1人ひとりの作業者は複数の管理者から指示・命令を受けるため、受け取る指示・命令の間に矛盾や違いがあった場合、
作業者が混乱するのは避けられない。

③ライン・アンド・スタッフ組織

専門知識を持った者をスタッフとして独立させ、直接的な権限・命令とは別に、助言や
援助を行わせるというものである。すなわち、ライン・アンド・スタッフ組織はライン組織における指揮命令の単純さを生かしつつ、
ファンクショナル組織の専門性を生かすことを目指している組織形態であることがいえる。

1.機能別組織
2.事業別組織
3.マトリックス組織

 

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